モノをたくさん所有することを、やめてみる
― かわりに健康・お金・時間が得られた私のはなし ―
いま、わたしの家には、わたしが選び抜いたモノしかない。
もし突然目が見えなくなったとしても、この家の中なら生きていける気がする。
なぜなら、自分が所有しているモノと場所をすべて把握しているから。
ここに至るまで、長い道のりだったな。
ちょっと振り返ってみようと思う。
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実家の庭と家の中
わたしの親は、片付けや掃除に時間を割くのはもったいない、と考えているようだった。
多趣味だった母は、仕事をしながら料理やガーデニング、裁縫と色々やっていた。
庭はきれいに整えられて、美しい花がいつも咲いていた。
玄関には母の刺繍やパッチワークが飾られていて、それを褒められている母をよく見ていた。
けれど、一歩家の中に入るとカオスだった。
モノにあふれた家。冷蔵庫の中もぎっしりで、どれが食べられるのかわからない。
こたつの中にまち針が入っていたときは、恐怖で震えた。
でも他を知らないわたしは「こういうものなんだ」と思って暮らしていた。
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耳鼻科の先生のことば
大人になり、パートナーと暮らすようになった。
当時、パートナーは鼻水が止まらず、目のかゆみにも悩まされていた。
耳鼻科で診てもらったとき、先生に言われたのは――
「家の中を片付けて下さい。そして、掃除して下さい。エアコンの内部までしっかりやって下さい」
予想外のことばに驚いた。
お薬で治るんじゃないの?どうして片付けと掃除?
片付けも掃除も、それなりにはやっているつもりだった。
少なくとも、あの実家よりはずっといい。
だから、責められた気分になっておもしろくなかった。
掃除の頻度を少し上げてみたけれど、パートナーの症状は変わらなかった。
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一冊の本との出会い
そんなとき、ふらっと入った本屋で一冊の本が目に飛び込んできた。
やまぐちせいこさんの『少ない物ですっきり暮らす』。
著者は主婦で、夫と子どもの4人家族。
「こんなに少ないモノだけで、生きていけるんだ…」
わたしには衝撃だった。
そこから片付けや掃除に関する本を読みあさった。
共通して書かれていたメリットはこの3つ。
- 心身が健康になる(余計なものが入ってこない)
- 時間的余裕ができる(探し物・迷いがなくなる)
- 経済的余裕ができる(無駄がなくなる)
なんだかワクワクしてきた。
ここから、わたしの暮らしを整える旅が始まったんだ。
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まずはモノを減らすことから
掃除をする前に大切なのは、余計なモノを手放すこと。
わたしは少しずつモノを減らしていった。
最終的には、たぶん8割は手放したと思う。
モノが少ないと、掃除が格段にしやすくなる。
掃除が楽しくなる。
きれいな状態が当たり前になる。
きれいをキープしたくて、気づいたら掃除している。
こうして「いいループ」ができあがった。
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10年後のいま
あの耳鼻科の日から、もう10年。
長年の習慣や思考を変えるのには、ほんとうに時間がかかった。
でも、その間にパートナーの症状はいつの間にか完治していた。
今では10年前よりもずっと健康そうに見える。
そして、本当に気に入ったものだけに囲まれた生活は、わたしの心身も健康にしてくれた。
余計なモノを欲しいと思わなくなったし、買わなくなったので、お金も時間も増えた。
モノがたくさんあっても、まめに掃除して快適に暮らしている人もいると思う。
でも、もし片付けや掃除に時間が取れずに困っているなら――
やっぱり「モノをたくさん所有するのを、やめてみる」ことから始めてほしいなって思う。
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関連する本
やまぐちせいこ著『少ない物ですっきり暮らす』
いろんな片付け本を読んだけれど、これは究極の形だと思う。
「これでも生きていけるんだ」と思うと、今あるモノを見直したくなるんじゃないかな。
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When you own less, you gain more — health, time, and peace.
(持ち物を減らすことで、より多くを得る――健康も、時間も、そして心の平和も。)

